UXリーダーシップ Part 1: 優秀なリーダーの資質とは

UXmatters
2017年3月29日
原文: “UX Leadership, Part 1: The Nature of Great Leaders” by Jim Nieters and Pabini Gabriel-Petit [2014-12-08](翻訳: ソシオメディア株式会社)

素晴らしい高度な差別化を図るUXを創ることが全てのUXリーダーの目標でなければならない…しかし、多くの企業では、UXリーダーたちは最適とはいえないアプローチでリードせざるを得ない状況に直面している。

退屈で過度に複雑なUXを提供する企業から、市場において競合他社との差別化を可能にする、真に優れたUXを提供する企業へと変化を遂げるためには何が必要なのか――このコラムでは、我々の考えのハイライトをご紹介するシリーズの第2弾となります。一つ目のコラム(「UXリーダーシップの未来は急進的な変革にあり」)では、素晴らしい高度な差別化を図るUXを創ることが全てのUXリーダーの目標でなければならないと述べました。しかし、多くの企業では、UXリーダーたちは最適とはいえないアプローチでリードせざるを得ない状況に直面するのです。もし、UXのリーダーとして、あなたとあなたのチームが良い仕事ができないならば(つまり、人々の問題を解決し、インスピレーションを与え、喜びを提供するUXを創れないなら)、あなたはその組織にいるべきではなく、より良い環境を求めて転職したほうが良いでしょう。また、前回のコラムでは、最適なインパクトのためにUXをどのように位置付けるべきかについても述べました。

優れたUXを創るためには優れたリーダーシップが不可欠です。この第2弾の2回シリーズでは、素晴らしいUXリーダーになるためは何が必要かを見て行きたいと思います。Part 1 では、まずUXにおける優れたリーダーの必要性について考えた後、全ての良きリーダーに共通する性質について述べ、最後に素晴らしいUXリーダーになるための特別な要素を挙げていきたいと思います。UXリーダーも他の分野のリーダー(例えばビジネス、製品管理、エンジニアリングなど)と共通する資質はたくさんあるものの、UXリサーチや戦略、およびデザインを指導するためにはUXリーダーとしての特別な強みを持ち合わせていないといけないのです。
そして Part 2 では、どのようにして偉大なリーダーたちはUXチームまた組織全体を優れた存在となれるように導くのかについて考えていきたいと思います。

UXは優秀なリーダーを育成しなければならない

私たちが組織変革(組織的なトランスフォーメーション)を導かなければなりません。UXのリーダーは良いデザイナー以上でなければならないのです。UXのリーダーとして、私たちは影響力の範囲を拡大するためにリーダーシップの芸術​​を学ぶ必要があります。

UXリーダーたちからはよく以下のような嘆きの叫びが聞こえて来ます

  • 会社がデザイン戦略を真剣に受け止めてくれない
  • CEOに影響を与えられない・彼のマインドシェアを獲得できない
  • 望んでいるようなビジネス・インパクトが得られない
  • 役員会議に出席させてもらえない

このようなハードルを乗り越えていくためには強力なUXリーダーシップが必要です。私たちが組織変革(組織的なトランスフォーメーション)を導かなければなりません。UXのリーダーは良いデザイナー以上でなければならないのです。UXのリーダーとして、私たちは影響力の範囲を拡大するためにリーダーシップの芸術​​を学ぶ必要があります。会社にデザインとUXに対する考え方を見直してもらいたいなら、私たちは、会社の上級幹部たちと堂々と対話し、効果的にコミュニケーションをとり、組織全体でUXとデザイン思考を受け入れてもらえるよう影響を与えなければなりません。

UXリーダーを志すなら、あなたは

  • リーダーシップスキルを身につけばければなりません。
  • UXのあらゆる分野を深く理解していなければなりません。また、よく関わりを持つ他の分野(特に製品管理と製品工学)の知識も必要です。
  • ビジネスの言語を理解し、ビジネスコンテキストにおいて効果的にコミュニケーションがとれなければなりません。

リーダーシップは習得するもの

リーダーシップには特定のスキルが必須ですが、それは実践を通して時間をかけて学ぶものです。偉大なリーダーとして生まれた人などいません。リーダーシップとは、培われた能力なのです。

リーダーシップには特定のスキルが必須ですが、それは実践を通して時間をかけて学ぶものです。偉大なリーダーとして生まれた人などいません。リーダーシップとは、培われた能力なのです。確かにある人々は他者よりもリーダーシップの素質があったりリーダーに向いていたりするでしょう。しかし、全ての良きリーダーたちは、現実に起こった苦境を通してリーダーシップスキルを磨いてきたのです。それは、スポーツや音楽の習得と同じです:アスリートやミュージシャンは、プロになるほどの腕を磨くために練習を積み重ねなければなりません――毎日練習するのです。それも何年も続けて。

優秀なリーダーたちは、学び続けなければならないことをよく知っています。重要なリーダーシップスキルを自分のものとし、自分のどういった行動がチームに最高の結果をコンスタントに出させるのか、理解していなければなりません。また、リーダーシップスキルを向上させるべきなのは指導的立場にある人だけではありません。すべてのUXのプロは、効果的なリーダーとなるべきなのです。それはUXの 専門家であるならば、組織全体にUXを拡大させる立場にあるからです。

チームによく貢献してくれる個人をマネジャーにしたら、その人は優秀なマネジャーになる、というのは誤った考えです。貢献者とリーダーは全く違ったスキルが必要だからです。新任のマネジャーは、リーダーシップスキルを学び、自ら育み、実践しなければなりません。偉大なデザイナーやリサーチャーになるためには何年も職場で実務を積み重ねなければならないのと同じように、現実世界の問題を解決する、優秀なリーダーになるためには、リーダーシップについて勉強してきたことを実世界で適用する必要があります。こうすることがリーダーシップスキルを成長させる唯一の方法なのです。
 
UXの業界は偉大なリーダーを必要としています。私たちはもはや、効果的なリーダーシップについて知り尽くすことなしに、役員の会議室に踏み込み、会社に変革を起こし、デザインによる差別化を図ることはできません。我々は優秀なリーダーを育成していかなければならないのです。

優秀なリーダーは常に成長のための努力をする

最高の企業、チーム、そして個人は、最初に自身の至らない点にしっかり目を向け、それから解決に向けて動きだすのです。

優秀なリーダーとなるためには常に学び、成長し続けなければなりません。学習に対してオープンになるということは、自分の欠点や弱みを認識し、それを修正する方向に向かうということです。私たちは皆、欠点があります。ジム・コリンズがその著書『Good to Great』(邦訳:『ビジョナリーカンパニー2 – 飛躍の法則』、日経BP社、2001年)の中で指摘しているように、最高の企業、チーム、そして個人は、最初に自身の至らない点にしっかり目を向け、それから解決に向けて動きだすのです。私たちは自分の弱さを認めなければ、成長することはできません。

あまりにも多くのリーダーたちが、自分たちのリーダーシップアプローチに対して守備的です。それは、人々が彼らのリーダーシップスタイルに基づいて彼らのことを判断するのではと恐れ、欠点は隠さねばと考えるからです。けれども、幸いなことにこれほど真実からかけ離れたものはありません。世界のトップを行くリーダーたちは、リーダーシップをいとも簡単なことのように見せますが、それができるようになるまでには何年も練習を重ねてきたのです。最高のリーダーは、自分の行動・成功・失敗を分析し、実践を通して自身を向上させることができるのです。あなたは、今はまだ「優秀なリーダー」ではないかもしれません。けれども、これからその目標に向かって動き始めることができるのです。

UXは基本的にはクリエイティブな、問題解決のためのプロセスであるため、優れたUXを生み出すためにはリーダーが環境とチームを整え、クリエイティブな人材がスキルを極められるように支援する必要があります。最高のリーダーたちは、創造性を妨害するものは何であるかを認識し、それを取り除く必要があることを知っています。エド・キャットムルが彼の著書『Creativity Inc.』(邦訳:『ピクサー流 創造する力 – 小さな可能性から、大きな価値を見出す方法』、2014年、ダイヤモンド社)の中で言うように、「最高のリーダーは、彼が知らない・分からない事柄を認識し、そのためにスペースを作ります。それは、謙遜は美徳であるからという理由だけではなく、リーダーがこの考え方を採用しなければ、驚愕のブレークスルーは起こらないからです。」

後に、このUXリーダーシップの2回シリーズの中で、偉大なリーダーたちがどのようにしてチームの能力を磨き、成功を促進し、チームメンバーに「ついて行きたいと」思わせるようなリーダーとしての行動をとるのかを見ていきたいと思います。こういったことを述べるのは、我々が人に対して甘いからではありません。また、我々のユニークな視点を反映しているからこのようなアイデアを支持しているわけでもありません。同じような考え方が数々のリーダーシップの良書の中で紹介されています。Part 2 の最後にリーダーシップスキルを養う手助けとなる推薦書をリストアップするので参照してください。

我々がこのように述べるのは、チームを興奮させ、インスピレーションを与え、成功できるように整え、能力を向上させることは高いパフォーマンスが出せるチームを構築することだからです。最高のリーダーだけが最高の結果を得ることができます。最高のリーダーは、良いチームに世界クラスの結果をもたらします。一方、良くないリーダーは、世界クラスのチームに平凡な結果を出させかねないのです。

リーダーになりたいのはなぜか

チームを興奮させ、インスピレーションを与え、成功できるように整え、能力を向上させることは高いパフォーマンスが出せるチームを構築することだからです。

リーダーあるいはリーダーになりたい人がまず自問しなければならないことは「なぜリーダーになりたいのか」です。ジム(Jim Nieters)が自身のコラム「So You Want to Be a UX Manager—Seriously?(あなたは本当にUXマネジャーになりたいのですか?)」の中で指摘しているように、ユーザーリサーチやデザインといった専門分野で働いている人がマネジャー(管理者)となることは、必ずしも全員にとって自然なキャリアパスではありません。UXのリサーチャーあるいはデザイナーとして培うスキルのほとんどは、その人がマネジャーやリーダーとなったときに役立つスキルではありません。もちろん、ある部分は適応できるかもしれません――特にその人がマネジャーという役職には就いていなくても、組織内で事実上リーダーの役割を担ってきた場合はそうでしょう。繰り返しになりますが、優秀なリーダーに必要な特定のスキルを磨いていかなければならないのです。

難しいのは、リーダーシップの素質が特に無い(向いていない)UX専門家で、お金と敬意をより多く受けるための唯一の方法は、管理職ランクに登っていくことだと考える人がしばしばいるのです。しかし、残念ながら多くの企業では確かにそうであり、これは改善すべき状況です。あなたが、本当はリーダーにはなりたくはないけれど、それがステップアップのための唯一の方法だと思う場合、その道をそのまま進まないで下さい。管理職とは別に、並行して成長できるキャリアパスを提供する企業に転職しましょう。これはあなたのチームの利益のためだけでなく、あなた自身のためにお勧めしたいと思います。マネジャーという役割があなたに合っていないのなら、あなたはその仕事が嫌になり、あなたのために働くスタッフもフラストレーションを感じるでしょう。また、あなたの所属する組織を平均的な存在から群を抜く存在へと変革することもできません――でも、あなたは「平均的」は耐えられないでしょう。

 その一方で、もしあなたがリーダーシップを取る立場に魅力を感じ、人々や組織が最善なものとなれるよう助けたいと願い、戦略のあらゆる側面について全て責任を負うことをポジティブに捉え、品質レベルを高く保つ責任者、そして組織の中の一人ひとりの責任者となりたい(あるいは組織全体の責任者となりたい)と思うなら、是非リーダーとなってください。

あなたはリーダーとしてふさわしいか

あなたがリーダーに適していると思うならば、最初のステップは、正直かつ客観的に自身のスキル、弱み、価値観、そして目標を査定してみましょう。

あなたがリーダーに適していると思うならば、最初のステップは、正直かつ客観的に自身のスキル、弱み、価値観、そして目標を査定してみましょう。これらがリーダーシップと合致するなら、思い切ってリーダーになってください。そうでない場合は、最高のリサーチャーあるいは最高のデザイナーになってください。あなたが好きな仕事に熱中し、その仕事を通じてよりよい世界を作ってください。

あなたがマネジャーあるいはリーダーになるのにふさわしいか、その適性を評価するため、次の3つの手順をご紹介しましょう

  1. ジムのコラム『So You Want to Be a UX Manager—Seriously?(あなたは本当にUXマネジャーになりたいのですか?)』の中の Manager Competencies and Values(マネジャーの能力と価値観)というセクションを参照し、リーダーに必要な能力について自身の強みと弱みを評価してみましょう。
  2. あなたのリーダーシップスキルについてのフィードバックを360度の視点から収集するよう独立した専門家に業務委託しましょう。彼らはあなたの仲間、上司、直属の部下やあなたがプロジェクトで指導してきた人々から洞察を得ます。そのフィードバックを受けて、リーダーになろうとすることは労力の無駄だと判断するか、またはリーダーになるための障害物を取り除くべくあなたの行動を変えるか、のどちらかです。リーダーたちは皆、少なくとも年に一度は360度のフィードバックを収集するべきです。
  3. リーダーシップを実践し、スキルを向上させることに注視しましょう。好きこそ物の上手なれ、です。そして、上手になればさらに好きになるものです。もしあなたがすでに指導的立場にいるけれども、その立場が好きでないならば、個人としてのチーム貢献者に再び戻ればいいのです。良いデザイナーやリサーチャーであることは素晴らしいことです。あなたが熱心に打ち込めることをするべきです!

特定のリーダーシップスキルは、デザインや研究のスキルを学習するのと同様で、学習するものです。確かに、あるデザイナーやリサーチャーまたはマネジャーは他者よりも優れているかもしれない。しかし、訓練も経験もなく、仕事が自動的にできるようになる人などいません。大きな成果を挙げるためには、改善するために力を合わせなければなりません。既にUXリーダーとなられている方もこれからなりたいと考えている方も、是非自分自身の成長のためにフィードバックを定期的に要求してください。あなたのチームのために、あなたは可能な限りの最高なリーダーでなければならないのです。

リーダーシップにまつわる神話

優秀なリーダーにはカリスマ性がある、とも思われがちですが、リーダーの優秀さはその人のカリスマ性に依存するものではありません。

ある人は、自己主張が強く、断定的な発言をする人が最高のリーダーになれるのではと考えるかもしれないですが、これは真実からかけ離れています。ジム・コリンズは『Good to Great』(『ビジョナリーカンパニー2 – 飛躍の法則』)の中で、優秀なリーダーは必ずしも一番積極的な人がなるものではないと述べています。むしろ、優秀なリーダーは、絶対に妥協することのない、強力なビジョンを持つ人です。実際には、目立つ性格の人はそうでない人と比べてリーダーとしてのパフォーマンスが悪いケースが多く、また、そういった人が会社を去ったとき、その組織はそれまで成長させようと努力してきたことが維持できなくなることがしばしばあるのです。

優秀なリーダーにはカリスマ性がある、とも思われがちですが、リーダーの優秀さはその人のカリスマ性に依存するものではありません。カリスマ性がリーダーシップのプラスになる、重要な要素であることを示唆する専門書はあまりありません。優秀なリーダーは、経験を積んで行く中で人々にインスピレーションを与える方法を学んで行きます。それがカリスマ性と勘違いされることがあるのです。カリスマ性そのものは、最大の結果を持続的に生み出すために不可欠なものではありません。

優秀なリーダーの資質

優秀なリーダーは、大きな成果を上げるためにはチームで取り組まなければならないことを知っています。

優秀なリーダーは、大きな成果を上げるためにはチームで取り組まなければならないことを知っています。素晴らしいリーダーシップとは、業績を上げるチームを構築することです。良いリーダーは、踏み込むべきときと、一歩下がるべきときとを見分けることが出来ます。チームがベストコンディションにあるときは、リーダーの存在は外部にはあまり見えてこないものです。リーダーは、チームルームの中で最も重要な人物であってはなりません。優秀なリーダーは、最高のメンバーを雇い、彼らが最高の仕事ができるようインスピレーションを与え、チームとして自主的に動けるようにします。最高のスポーツチームも同じです:チームがうまく行っているときは、監督はチームに動きを任せ、選手の気持ちを高めることだけに集中します。そしてうまく行かないときは監督が出てきて(大抵ここで少しドラマがありますが)選手を交代させたりします。リーダーシップをとることは容易ではありません。チームに正しい考え方をさせるためには多くの労力が伴います。良きリーダーシップとは結果を得ることなのです。

同時に、優秀なリーダーは感情的側面においてもチームの中心人物です。リーダーは、素晴らしいパフォーマンスに対して報酬を与え、優秀なメンバーでも落ち込んだ時には励まし、一人ひとりが成長できるよう後押しします。リーダーはチームメンバーとうわべだけではない、本物の関係を築きます。リーダーと最高のチームメンバーとの間には強い感情的なつながりと高いコミットメントが見られます。あなたはリーダーとして、あなたのチームの向上のためには何でもしたい―たとえ自身を犠牲にしてでも―という熱い想いがなければなりません。リーダーシップには多くの場合、自己犠牲が伴います。決して自己権力拡大のための手段ではないのです。

優れたリーダーシップには大胆さ、そして「勇気」とも言えるものが必要です。また、人の信頼を受けていなければなりません。ですから、優秀なリーダーは政治的に明敏でなければならない一方で、自身は政治に無関心で、自己利益のためにではなく、大義のために働くのです。もし優秀なリーダーについてのこの描写に同意できないなら、あなたはリーダーシップの立場にいるべきではないでしょう。

優秀なリーダーは、人々が喜んでついて行ける人である

リーダーが模範となるため、あるいは手本を示すことによって指導するためには、彼が正直で信頼できる人であることをチームが信じていなければなりません。

James Kouzes と Barry Posner の古典的な本『The Leadership Challenge』(邦訳:『リーダーシップ・チャレンジ [原書第5版] 』、2014年、海と月社)は、数十年に渡る研究に基づいて書かれた本ですが、その中で、人が喜んで従うリーダーの最も重要な特徴がリストアップされています

  • 正直 ― リーダーが模範となるため、あるいは手本を示すことによって指導するためには、彼が正直で信頼できる人であることをチームが信じていなければなりません。
  • 前向き ― 優秀なリーダーには先見の明があります。目標をしっかり見据えていて、チームに彼のビジョンに対する信念を抱かせます。
  • 有能 ― チームの信頼を獲得するためには、リーダー自身の有能性を示すことが欠かせません。
  • インスピレーションを与える ― 優秀なリーダーは、チームをインスパイアし自分のビジョンを実行させ、さらに大きな責任を担っていく自信を与える。

こういった特徴のすべてがリーダーの信頼性に貢献するのです。Kouzes と Posner は、「信頼性はリーダーシップの基礎である」と述べています。このシリーズのPart2ではどのようにして強力なビジョンを確立し、有能性を示し、チームを鼓舞させるのか、その方法について解説したいと思います。

優秀なリーダーは政治に無関心であり、同時に政治に明敏である

政治的に「抜け目がない」ようにすることは、一般的な企業において重要なサバイバルスキルです。私たちは、素晴らしいUXを生み出すことと正反対のアジェンダを持っている人たちから自分自身とチームを守らなければならないからです。

一般的には私たちは政治を嫌いますが、政治はビジネス界で働く中での現実でもあるので、政治的に「抜け目がない」ようにすることは、一般的な企業において重要なサバイバルスキルです。私たちは、素晴らしいUXを生み出すことと正反対のアジェンダを持っている人たちから自分自身とチームを守らなければならないからです。

人は(特にリーダーシップをとる立場の人は)、自分が「一番良い」と思う人に引き寄せられる傾向があります。多くの場合、自分にとって最も有益となる人を探すのです。ですから、あなたがそうなのか、そうではないのかを判断しようと(あるいは、あなたが彼らのアジェンダに心合わせているのかを知ろうと)一文のサウンドバイトを聞き取ろうとします。また、あなたが彼らの時間を投資する価値がある人物なのかについて、他のリーダーの意見を頼りにするかもしれません。あるいは、彼らは自分に似た性格の人を探すかもしれません。というように、こういった非合理的なやりかたで、あなたが選ばれるか選ばれないのかが決められるのです。

政治環境の中で生き残るためには、連合をつくり、周囲のサポートを得る方法を学ばなければなりません。コラボレーションを真の協力と自然な連携を構築するための手段と捉えましょう。素晴らしい結果を提供することで、サポーターを勝ちとりましょう。輝かしい結果を得ることによって、ひとりとしてあなたに政治的挑戦状を叩きつけることがないようにするのです。

このすべてを達成するには優れたリーダーシップスキルが必要ですが、それだけではなく、あなたの勇気が試されます。あなたは、あなたのこれまでの実績をはるか上回る、あなたより数十億ドルも多く収益を上げてきたような人とでもしっかり向き合って、あなたのビジョンをサポートしてほしいと説得しなければならないのです。あなたのチームが常に会社の内部関係者に好印象を与えるデザインを提供しているなら、彼らはあなたとチームのことを褒め、周りに知らせ、最終的には組織の幹部たちに認識してもらう日が訪れるでしょう。

知識を広く深く身に付ける

効果的なUXリーダーになるためには、UX分野すべてについて深く理解していなければなりません。理解していない事柄について人を導くことはできません。

効果的なUXリーダーになるためには、UX分野すべてについて深く理解していなければなりません。理解していない事柄について人を導くことはできません。驚くばかりですが、一部の企業はUXの価値を過小評価するあまり、だれでもUXリーダーになれるという誤った考えを持ってしまっています――UXについて生かじりの知識しかなく、UX研究やデザインの技術や経験も全くない人でもなれるものだ、と。そのため、多くのUX専門家やチームがごっそり製品管理やエンジニアリング部門の直属とされている現状があります。これが、UXチームが失敗する主な原因となっています。リーダーシップのスキルは不可欠ですが、それだけでは不十分なのです。UXを深く理解している、レベルの高いリーダーを欠いたUXチームは、組織に大きなインパクトを与えられないのです。

また、UX専門家が共に仕事をする主な分野(特に製品管理と製品工学)についての知識も深めていく必要があります。彼らの言語を話し、具体的な価値を提供し、彼らのニーズを考慮したプロセスを開発できるようにするには、彼らのニーズや目標を理解し、彼らの仕事の仕方に精通していなければなりません。そして、多くの製品管理や開発スキルはUXリーダーを含むUX専門家全員にとって有用なスキルです。フロントエンドの開発者がUXリーダーに報告する組織においては、ソフトウェア開発の知識がますます重要になってきています。

知識にしてもスキルにしても内容が非常に広く深いので、身につけていくためには、学習が常でなければなりません。これは、最新のUXメソッドを把握することにおいて特にそうです。UXは急速に進化していく分野です。ハンズオンで携わっていないUXリーダーは常に自分のチームのメンバーから学ぶ謙虚さを持つべきです。

ビジネスの言語を習得する

UXリーダーとして、私たちは企業幹部と肩を並べ、彼らの言語を話さなければなりません。私たちがシンプルかつ説得力のある話し方でUXと利益がいかにつながっているかを説明できれば、私たちが影響を与えたい幹部の信頼を獲得できるのです。

UXリーダーにとって、リーダーシップスキルの向上を図る一つの要素として、デザイン上の細かいことにうるさくなり過ぎるのではなく、会社に対してUXの価値をアピールすることに力点を置くことが挙げられるでしょう。あなたの上に立つ幹部は、あなたとあなたのチームに給与を支払い、チームがベストの結果が出せるよう必要なリソースを提供してくれているでしょう。ですから当然、その投資のリターンを期待しています。企業幹部は何も世界をより良くしたいからという理由だけでUXの専門家を雇っているのではありません。良い幹部は世界を変えたいと願いますが、そのために収益や利益を犠牲にするつもりはないでしょう。彼らの仕事もあなたやチームの仕事は、会社の成長とその株価に依存することを覚えておかなければなりません。

あなたは幹部の会議室に入り、アジアや欧州での財政目標をどうすれば達成し、さらに目標を上回れるかについての話し合いに具体的な貢献ができますか? UXリーダーとして、私たちは企業幹部と肩を並べ、彼らの言語を話さなければなりません。私たちがシンプルかつ説得力のある話し方でUXと利益がいかにつながっているかを説明できれば、私たちが影響を与えたい幹部の信頼を獲得できるのです。

ビジネスの言語を話せるようになるのは、一晩でできることではありません。MBAを取得したほうが良いのか?そうするのも良いかもしれません。しかし、MBAを獲得することで経営幹部のエリートクラブへ自動的に入れるわけではありません。ジムは彼が所属していた、組織内のシニアリーダーシップ開発プログラムに参加して恩恵を受けました。このような機会を通して、ジムは大規模な組織の幹部になるためには何が必要か、幹部たちの深い洞察を共有してもらいました。パビ二は、全く違った方法でビジネス感覚を磨いてきました:様々な書籍を読み、まずはスタートアップというコンテキストでリードするための準備をし、その後、経験豊かな経営陣とスタートアップで直接関わってきました。ビジネスの学び方は様々ですが、大切なのはすぐに始めることです。

結論

このリーダーについていきたいと人に思わせ、組織を変革して結果を残せる(事業の成果を上げる斬新なUXを提供する)UXリーダーとなるためには、すべてのリーダーに備わっているべき資質に加えてそれ以上のものを身につけなければなりません。

このリーダーについていきたいと人に思わせ、組織を変革して結果を残せる(事業の成果を上げる斬新なUXを提供する)UXリーダーとなるためには、すべてのリーダーに備わっているべき資質に加えてそれ以上のものを身につけなければなりません。
既に述べたように、もし役員会議でUXを議論してほしいと願うなら(私たちの目標は、デザインよって差別化を図る企業へと会社に変革を起こすことですから)私たちUXリーダーはリーダーシップについて可能な限り学ぶ必要があるのです。どのような仕事であれ、リーダーとして成功し、人に影響を与える人になるには練習が欠かせません。UXリーダーシップも例外ではないのです。素晴らしいUXリーダーは、組織内のすべてのレベルにおいてUXの良さを伝える伝道者です。リサーチャーやデザイナーをインスパイアし、彼らが最高の作品を生み出せるようにする方法を知っています。そして、いつ踏み込むべきか、いつ一歩下がるべきか、どのようにして結果を得るのかを知っているのです。

リーダーシップについての2回シリーズの第一弾であるこのコラムでは、あなたがリーダーになる備えができているか、あるいはあなたが優秀なUXリーダーとなれているかどうかを判断するための参考基準を提供してきました。第二弾である Part 2『UXリーダーシップ――優秀なUXリーダーがするべきこと』では、優秀なUXリーダーに特徴的な行動について考えていきたいと思います。あなたが優秀なUXリーダーになることを目指しているならば、以下のようなことをするべきです

  • 最高のUXリサーチャーやデザイナーを雇う
  • UXに対する強力なビジョンを確立し、そのビジョンの共有を推進する
  • あなたのビジョンに人(関係者やUXチームのメンバー)を参加させる――そしてインスピレーションを与えることによって感情的なつながりと行動を引き出す
  • 説得力のある成果を想定する。しかし、その達成方法はあなたのチームに任す​​
  • 新しいアイデアやアプローチは迅速に学び採用し、失敗から学ぶ
  • 良き模範となる
  • 信頼を築く
  • あなたのチームの非公式リーダー(リーダーの肩書きはないものの、まとめる役割を果たしている人)を評価し、報酬を与える
  • あなたのチームが最高の仕事ができるように環境を整え、正しい行動に対して報酬を与える
  • あなたのチームメンバーのキャリアを応援し、より大きな責任と自主性が持てる機会を与えていく
  • あなたのチームに継続的かつタイムリーにフィードバックを与える
  • 素晴らしい成果を上げる