UX戦略フォーラム 2016 Spring の狙いと背景

篠原 稔和

2016年4月19日

来る、2016年5月27日(金)に、「ソシオメディア UX戦略フォーラム 2016 Spring」を開催します。今回のタイトルは「イノベーション組織の推進」。国内外から6名のゲストを迎える本イベントは今回で6回目を迎えます。そこで、本イベントの見どころや、その背景にある内容について、これから数回にわたって解説していきます。

組織全体にUXを推進する役割を果たす「UXリーダーシップ」

本イベントは、「UX(ユーザーエクスペリエンス)」に関する一連の活動を、企業経営の中核に据えて展開する「UX戦略(UX Strategy)」を主題にしています。そして、この「UX戦略」のメカニズムを探求していくために4つのテーマを設定し、各テーマを主軸として国内外の専門家や実践者を迎えて取り組むことに特徴があります。その4つのテーマは、「マネジメント」「リーダーシップ」「メソッド」「メトリクス」。2015年は、Spring で「マネジメント」、Summer で「メソッド」、Fall で「メトリクス」を取り上げてきました。

今年最初の Spring では、初めて「リーダーシップ」に焦点を充てます。本テーマ「リーダーシップ」は、これまでの各テーマ同士がそれぞれ深く関連性を持っていたことと同様、その他の3つのテーマとも深い関係があります。中でも「マネジメント」との間には密接な関連があり、いわば、UXに関わる「組織やチーム」に焦点を充てる「マネジメント」に対し、その組織やチームで牽引するリーダーや構成員である「人物」に焦点を充てるのが「リーダーシップ」です。「マネジメント」と「リーダーシップ」とは表裏一体の関係にあるとも言えるでしょう。

一般的に「リーダーシップ」と聞くと、現状を打開したり、変革を促したりする役割や人物のことだ、と捉えてしまい、「その役割にはないので自分には関係ないことだ」と早合点してしまう方も多いかもしれません。もちろん、UXのリーダーシップにおいても、UX組織を率いて企業革新を起こしたり、UXチームをとりまとめて新しい製品やサービスを創り出したりといった、「変革型のリーダーシップ」の側面もあります。しかし、既存の事業リーダーやチームリーダーを支えながら、市場のユーザーの声や振る舞いをチーム内に持ち込む役割をもった、リーダーを支える形でUXを推進するリーダーシップ(「サーバント型のリーダーシップ」と言います)などもあるのです。そのことから、こういった早合点を避けるために「イノベーション組織の推進」といった標語を用いました。

それでは早速、今回のプログラムのポイントとその背景について、解説していきましょう。

UXマインドを急速に大企業組織に浸透させた米GEのCXO

今回のキーノートスピーチは、米GE(ゼネラル・エレクトリック)のUX組織のジェネラル・マネジャーであり、UXを推進する担当役員であるCXO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)をつとめる、グレッグ・ペトロフ(Greg Petroff)氏です。そもそもペトロフ氏を、キーノートスピーカーとして招聘することになった背景には、2つの出来事がありました。

1つめは、私たちがさまざまな企業や組織に対して「UX戦略」を推進していく仕事の一環で、各企業における「UXの成熟度」を測るといった活動がきっかけになっています。これまでに、国内外のいくつかの業界や代表的な企業のUX活動をリサーチし、「各企業でUX成熟度を構成する要素が何なのか、その各要素がどういった状態になれば「UXの成熟度」が引き上がるのか」を探求してきているのですが、その経緯から「突出したスピードで成熟度を向上させている組織」が判明しました。それが、まさにGEだったのです。

UX成熟度モデル図

2つめは、昨年春の「マネジメント」をテーマにしたフォーラムに遡ります。そのスピーチを務めたゲストのお2人のいずれもが、エクスペリエンス展開で着目しているケースとして、くしくも同じ企業のことを取り上げました。新井宏正氏は「イノベーション実現メソッド」の流れから、朝岡崇史氏は「ブランドのエクスペリエンス価値」の流れから、それぞれが今後のターゲット領域である「インダストリアル・インターネット」の旗印の下に特筆すべきケースを紹介しました。そのケースこそが、まさにGEだったのです。

早々に(昨年8月)、米GEのUX推進拠点のある米カリフォルニア州サン・ラモンの Design & Experience Studio に出向きました。そこでお会いしたのが、既に CXO として同社でご活躍のペトロフ氏だったのです。その場では、ペトロフ氏やそのUXのスタッフたちが「GE全社に対してどういった役割を果たしているのか、どのようにして短期間でUXに関わる組織の成熟度を向上させてきたのか」について、その新しい環境とともに、うかがうことができました。そして、ペトロフ氏が大企業の CXO に就任するまでの足取りを知るうちに、組織の中でUXの専門性を活かしながら、企業全体にUXを波及させる役割を担うまでの足取りなどから、その人物像そのものが、今後のUX発展の参考になるに違いない、と確信するに至ったのです。

ペトロフ氏の日本での講演までの間に、ペトロフ氏を取り巻くGEのインダストリー・インターネットとUX組織との関係や、その聖地となる Design & Experience Studio の様子、そして、UX組織としてのGEから学ぶべきヒントなどをご紹介していく予定です。

日本を代表するUX組織リーダーと、UXSF の海外パートナーの再来日!

いわば、世界におけるUX組織のベストプラクティスと言える米GEに対し、日本の企業の取り組みやそのリーダー達も負けてはいられません。今回、日本を代表する企業のUXリーダー3名をお迎えし、その取り組みの様子や組織・チームを取りまとめる際のお話、そして、数々の事例を紹介していただくことも、今回の大きなポイントです。その3名は、株式会社日立製作所の的池 玲子さん、日本電気株式会社の河野 泉さん、ソニー株式会社の平山 智史さんです。3名の方々は、UXの推進組織を率いる立場であると同時に、それぞれが「UXエキスパート、クリエイティブマネージャー、チーフUXストラテジスト」といった専門的な社内での役割を認められた上で、組織活動に邁進しておられます。取り組みの様子を知ると同時に、リーダーとしての役割やリーダーシップ像のケースを知る上でも貴重な機会になるでしょう。

また今回、2014年春の UXSF のスタート時から企画の趣旨に賛同し、世界のUX戦略の現在を伝えてくれている米 Fit Associates 社のマーク・レティグ氏と、同社パートナーのハナ・デュ・プレシ氏による「UXリーダーシップ」を掘り下げる講演も聞き逃すことができません。ハナ氏は、現在の不確実な時代において、身につけておくべきリーダーシップスキルについての詳細を。そして、マーク氏は、組織の中でUXを推進していく上でのスキルのポイントとして「対話力」に着目し、UXリーダーシップを果たす上での中核となる与件について解説してもらいます。

そして、当日のパーティでは、会場に集まった方々同士が互いに積極的な交流をしたり、ゲストスピーカーたちとの積極的なやりとりや質疑応答を行えたりできるように企画しています。その皮切りとして、ペトロフ氏との対談を通じ、ペトロフ氏の活動や人物像に迫っていく予定です。また、当日のイベントをメディアの立場から盛り上げてくださる企業からのプレゼントや特典なども用意しています。特に、世界に向けてUXの良書を企画・出版し、UXSF とシンクロするかのように米国で開催されているイベント「Enterprise UX」を主催する米 Rosenfeld Media からは、書籍のプレゼントや割引券などを提供してもらう予定です。そして、C2C による世界的な教育プラットフォームである米 Udemy 社からも、今回のイベント内容にも関連した教育プログラムを特別料金で提供してもらうことになっています。

先のGEの詳細のご紹介に加え、マーク・レティグ氏との間で行う「UXリーダーシップ」にかかわる世界の現況や前提知識に関するやりとりや、「UXリーダーシップ」にかかわる関連情報についても、本ブログにてご紹介して参ります。