UIの混在による混乱を救いたい

川添 歩

2009年12月25日

タッチが混乱させるUI

最近のケータイでタッチインターフェースを採用しているもののほとんどは、iPhoneとは異なり、これまでのボタンやキーも併せ持っています。こうした製品では、ごく一般的に言えば、タッチインターフェースを併せ持たない場合よりもUIの混乱を招きやすくなります。なぜなら「どの場合には物理的なボタンを使い、どの場合にはタッチを使うのか」ということへの的確な選択をUI設計で常にし続けなければなりませんし、今どちらで操作すべきかをユーザーに明確に伝えるための表現を慎重に検討する必要があり、これらは、かなり高度なデザイン上の判断とアイディアが必要になるからです。

タッチUIを採用した製品がよく「直感的に操作できる」(あるいは「直観的に操作できる」)という宣伝文句を用いているのを眼にしますが、「タッチにすれば直感的になる」わけではまったくありません。多くの場合、異なるUIの混在による問題をむしろ内在させる結果となります。キーとの併用ではタッチかキーか、どちらで操作するかを「直感的に」伝えなければ、使いやすくなるどころか、かえって混乱を増大させるのです。そして現在存在するそのような製品の大半は、実際混乱しているようにみえます。

ジェスチャーが混乱させるUI

最近、Wiiのスーパーマリオ(『New スーパーマリオブラザーズ Wii』)を購入しました。3D空間を自由に動き回れるタイプではなく、ファミコンからの伝統的な2D横スクロールに回帰し、Wiiのコントローラーも横持ちしてファミコンと同じように、左手で十字キー、右手でボタンを押すUIです。かつてのスーパーマリオの操作になじんでいる者にとってはなじみのある、すでに学習済みの操作で迷うことはありません。
ただし、このゲームではWiiの機能を活かそうとして、Wiiコントローラーの持つ加速度センサーをUIの一部に取り入れています。コントローラーを傾けることで、マリオが載っている板の角度を変えたり、コントローラーを大きく振り上げることでマリオがスピン上昇したりします。これらは一種のジェスチャーUIと言っていいでしょう。
ジェスチャー操作を取り入れたことで、二つの操作モデルが混在することになり、ユーザーにやや混乱を与えています。マリオの載った板を傾けるのは、ジェスチャーによる直接操作なのに、そこに載っているマリオを操作するのは十字キーによる間接操作になります。これを同時に把握しながら操作するのはけっこう難しいものです。まあマリオはゲームなので、難しい操作をハードルとするのはアリなのですが、これが一般的なUIであれば問題となります。
一方、コントローラーを振り上げることによるマリオのスピン上昇は、ゲームとはいえ少し問題である気がします。マリオを上方向に移動させるという、ユーザーのメンタルモデルとしては同種類の行動に対し、操作としてはボタン押下とコントローラー振り上げというまったく別のUIが混在するため、たとえば通常のジャンプをさせようとしてついコントローラーを振り上げてしまったりします。これは既存のマリオUIに慣れていても、ジェスチャーを使えることを学習したあとでは、意識しないと混乱します。つまり、「直感的でない」のです。
ジェスチャー操作も「直感的」と喧伝されることが少なくありませんが、タッチと同様、ジェスチャーを取り入れれば即直感的使いやすさになるわけではなく、むしろ逆に混乱を招くことの方が多いのです。

「混乱」や「制限」こそが、デザイナーの目の前にぶらさげられたニンジン

来年はおそらく、タブレットタイプの機器の案件があるのでは……と予測しています。タブレットタイプでも、タッチUIであったり、KindleのようにハードウェアのボタンによるUIであったり、あるいはそれらの混在になったりと、ユーザーの操作方法は多様なものとなるでしょう。
どのようなUIでも、ユーザーが指(やその他のモノ)をどのように使って、何を操作するのか、そしてその操作の結果として画面がどのように変化するのかを一連の「デザイン」として評価し、設計しなければなりません。
ハードウェアを一から設計してイノベーションを起こすということもしてみたいものですが、一方で、すでにある混乱や、起こりそうな混乱を最小限に留め、あるいはそこを逆手にとって巧妙に組み合わせたベストプラクティスを提供する、そういう困難さは、実はわれわれデザインをするものを奮い立たせます。制限があるからこそ、デザインの出番があるのです。