アクセシビリティ理解のきっかけは全盲ユーザーとの交流[熊本日日新聞社様]

2006年9月25日

熊本日日新聞社は、有力地方紙のひとつとして全国的な知名度も高い、熊本県の日刊新聞社です。新聞業界内で他社に先駆けて SimpleWeb(シンプルウェブ)によるアクセシビリティの向上を目指した背景には、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

総合メディア局 情報企画部長として熊本日日新聞オフィシャルウェブサイト「くまにちコム」の企画・運営に携わる、隈部一雄さんからお話をうかがいました。

「モノ作りの基本」は「誰のために、何のために」を定めることから

人物写真
熊本日日新聞社
総合メディア局
情報企画部長
隈部一雄さん

ソシオメディア:
サイト立ち上げから現在までの経緯についてお話しいただけますか。

隈部さん:
1995年に「くまにちコム」の前身として、熊本県内のポータルサイト「グリーンページ」の運営を開始したのが始まりです。2000年には、グリーンページの運営ノウハウを活かしてニュースサイト「くまにちコム」を立ち上げ、2005年にコンテンツを無料会員制に移行しました。

ソシオメディア:
会員制を採用した理由は何だったのでしょうか。

隈部さん:
ネットに流れるニュースのほとんどは新聞社から配信されたものですが、サイトへのアクセス数は、大手新聞社のサイトでも検索ポータルサイトにかなわないのが現状です。ポータルサイトでニュースを見てもらうのでなく、地域に密着したニュースは地域から発信していきたい、という強い思いがまずありました。

また、会員制にすることで「どんな人が」「どんなコンテンツを」見に来ているのかが分かるようになります。たとえば、今では総会員数の約3割を熊本県外にお住まいの方が占めていて、その中には熊本出身の方以外にも「水俣病」「川辺川ダム」といったキーワードに関心をお持ちの方がいらっしゃることが分かっています。このようにユーザーの関心を具体的に把握できれば、それに応える効果的なコンテンツ作りが可能になるわけです。

ウェブサイトに限らず、モノ作りの基本は「誰のために」「何のために」作るのか、ということをはっきり定めることにあると思います。ユーザーの顔が直接見えないウェブサイトでは、ターゲットを把握することが他のメディア以上に重要だと感じますね。

ソシオメディア:
対象となるユーザーをきちんと設定するということは、まさに、ユーザビリティを実践する姿勢そのものですね。

全盲ユーザーとの交流を通じてアクセシビリティを理解

画面キャプチャ
「くまにちコム」ウェブサイト

ソシオメディア:
アクセシビリティへの問題意識をお持ちになるきっかけとなった出来事があるそうですが。

隈部さん:
はい。2001年当時、全国的に始まっていた「IT講習会」が盲ろう学校でも開催されるという話を聞き、取材に向かった経験があります。 それまでは「視覚障害者の方がウェブを利用する」と言われても想像もつかなかったのですが、取材によって目から鱗が落ちました。全盲のユーザーは音声読み上げソフトを利用してサイトを音で「読み」、弱視のユーザーは画面を拡大し、一文字一文字ディスプレイに顔を近付けて読んでいらっしゃったのです。

「こうしたウェブの利用方法もあるのだ」ということに驚くとともに、そうしたことを多くの人に知ってもらいたいと記事を書いてサイトに掲載しました。すると、サイトのコラムを音声読み上げソフトで知った全盲の方から電話をいただきました。「今までは妻に頼んで新聞を読んでもらっていたが、今では読みたいときに1人でニュースを読めるようになった」という感謝の内容でした。

ソシオメディア:
現場の様子や、ユーザーの生の声に触れる機会があったわけですね。

隈部さん:
ええ。視覚障害の方と交流を持つことで、「アクセシビリティ」がサイトを運用していくうえで欠かすことのできない重要なキーワードだという認識が強まりました。

ただ、そうは言ってもサイトのアクセシビリティを「どこから」「どんな方法で」改善していけばいいのか分かりません。その後サイトも会員制に移行したのですが、先の全盲ユーザーの方からは「会員登録がうまくできない」というトラブルの報告をいただいてしまいました。すぐにでも何とかしたいのに、何をすればいいのか分からない…と頭をかかえていたのです。

SimpleWeb なら「変換対象外」のコンテンツが発生しない

画面キャプチャ
「くまにちコム」ウェブサイトのテキスト版

ソシオメディア:
SimpleWeb をご紹介したのはその時期だったのでしょうか?

隈部さん:
その通りです。「素早く簡単に導入できる」という SimpleWeb の特長を見て、さっそく社内での検証を開始しました。「テキスト版」で会員登録フォームが利用できるかどうかを懸念していたのですが、検証の結果、問題なくすべての機能を利用できることが分かり、採用が決定しました。テキスト版サイトを提供しても、肝心の会員制コンテンツが十分に利用できないのでは本末転倒ですからね。ドメイン単位ですべてのページを変換対象にできる SimpleWeb のメリットを感じました。

ソシオメディア:
テキスト版でもサイト全体の機能をそのまま利用できる点を評価いただけたということですね。

サイトの課題洗い出しに SimpleWeb を活用

ソシオメディア:
最後に、今後の課題や目標についてお聞かせください。

隈部さん:
サイト全体としての課題は、アクセシビリティの確保を SimpleWeb だけに頼ってしまっている点だと言えます。「画像に代替情報がない」「見出しと本文の区別が付きにくい」「ニュースの本文に行くまでの読み上げの量が多い」といった問題も、SimpleWeb のテキスト版ページを見ることで改めて認識できました。新技術の普及によってますます複雑化していくサイトコンテンツをどのようにまとめ、使いやすいサイトを構築していくか。設計段階から意識していくことが大切だと考えています。

ソシオメディア:
SimpleWeb をアクセシビリティ向上のためのチェックツールとして日常的に利用なさっている企業様もいらっしゃいます。サイトリニューアルの際にも SimpleWeb を是非ご活用ください。本日はありがとうございました。

関連

相談・問い合わせ

この事例をモデルとして、ソシオメディアが最適なソリューションを提案します。まずは問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

問い合わせフォーム