「フリー ユア UX 2016」 イベントレポート

上野 学

2016年12月26日

2016年12月16日にマイナビルームで開催された「フリー ユア UX 2016」。昨年末に行った「UX まとめ」に引き続き、今年も筋書きなしのフリーディスカッションを行いました。

イベントは弊社上野によるオープニングトーク「アナーキー・イン・ザ・UX」から開始しました。

フリーディスカッション

フリーディスカッションでは、事前に来場者の皆様からトピックを募集し、それらについて自由に発言していただくという形式で行いました。ここではいくつかのトピックおよび会場からの発言を紹介します。

トピック: UXデザインって別に新しくない。いままでだってやってたのになぜいまUXとか言ってるの?

思っている顧客と本当の顧客が違うことに気づきはじめたからではないか。事業者はお客を知っているつもりでも、お客が変わってきている。

いろいろなサービスを立ち上げるコストが圧倒的に下がってきた。競争も激しくなり、デザインの重要性が認識されてきた。

概念としてのUXについて思うことだが、プロジェクトメンバーでUXという概念を一致させるのは不可能だと思っている。

ユーザー体験の定義とかいちいちチームでやっているのはもったいないなあと。UXというものを日本語でちゃんと定義していればミーティングもまとめていけるのに。だからこそちゃんとチームで指標を測定して、その上の合意だったらよいだろう。

自分のいる組織ではユーザビリティからはじまっているが、モノがないとテストができないので、プロトタイプを創るコストをどう納得させるかが問題。
リリースしたあと、どうユーザーに使われているのかフィードバックを得るものとしてUXがある。違う使われ方をしているのではないかなど、新しい意味を知るツールとしての力がある。

新聞のオンライン版がはじまったときに電子新聞という言い方をした。新聞という言葉を使ったことでわかりやすかったという面もあるが、新聞の延長線上で考えられてしまったので、新しいことを適用をしようという状況が作り手にも消費者にも生まれなかった。

新しい言葉が生まれるときは、まったく新概念であることはなくて、何か過去から繋がるものがある。UXという言葉が使われるようになったということは、これまでやっていたことと何か差分があるのだろうか。

売り切りビジネスから、継続的なサービス指向になっているのがいちばんの差だろう。売ってしまったあとのことも考えるのがUX。

トピック: UXの理論やフレームワークは現場でどこまで役に立っているのか

役立っている。福祉施設の業務改善やブランディングをやっているが、どうすると嬉しくなるとか、効率がよくなるとかいったことを説明するのに、フレームが役に立つという実感がある。ただし「UX」という枠組みにこだわって仕事をしているわけではない。

ウェブサイトとかアプリケーションを作っているが、役立ったか役立ってないかというと半々というのが個人的印象。要件定義やKPIが設定されていると、本来のデザインができないことがある。最上流の段階から入れれば良いのだが受託の立場では難しい。

人間中心的なプロセスを行なった時に、良くなる時もあるが良くならない時もある。悪くなることはないが、違う理由で良くなることもあり、不確実性がある。良くならないケースがあると、人間中心的なことはしなくていいんじゃなかとクライアントから言われてしまう。

トピック: リサーチの価値についてクライアントへの最も効果的な説明のしかたは?

UXという言葉だけが先走りしている。調査をしても表面的な理解や小手先の改変にとどまることがある。

クライアントから調査をしたいと言われることがあるのだが、やっているうちに、最終的に目指していた所はどこだっけとリマインドしなければならないことがある。
ユーザー観察などの調査をしているが、UXデザインを行なっているという意識はあまりない。もともと心理学とか人間工学とかで言われていたもののラベルを変えただけだろう。

必ず観察とインタビューをセットにしていて、インタビューだけするということはしない。そうでないと実態がつかめない。本人達が気づいていなかった不便など。
常に新しいイノベーションを求める必要はない。それまでのやり方から少し順序を変えるだけでずっと改善されることもある。

リサーチにおいては、レポートなどの中間成果物を作ることが目的ではなく、一緒に考えましょうというチームビルディングを目的にしている。何かを前進・改善するために必要なことという認識。

ティップス的な話ですが、インタビューをするとき、「終わりました」といってから30分ぐらい雑談すると、本音が出てくる。あと、「観察しない」というのもやっている。その人自身に自分の一日を観察してもらう。自分を見つめ直すということになるので、その人自身の発見で、実感のある改善アイデアが出てくる。

発注する側ですが、現場でエスノなどの言葉がではじめている。現場では本質がわかっているが、上に伝えるのは難しい。プロジェクトにおける意思決定者は大企業で組織をコントロールをしてきた人たちで、現場の声に耳をかたむけない。意思決定者にとってはUXのリサーチなどどうでもいいようだ。
プロジェクトでは、デザイン会社と意思決定者を最初からつないでおくことが大切だと、発注者として思う。

一度クライアントの社長を巻き込めたケースがあって、それはとてもうまくいった。社長にエスノも同行してもらったりしたので、説明の手間が少なく済んだ。
意思決定者を巻き込めないと、クライアント組織内での意識の共有は難しい。

UXやリサーチなどについて理解できない層が唯一理解できるのはビジュアルデザイン。見えるもの、かっこいいものを崇拝する傾向があるので、「っぽいもの」を創っていくのは説得材料としてはあり。

トピック: ツールや流行りには詳しいのに自分のデザインができないデザイナーが多い

ブログなどでデザイナーが書いているものを読んでもつまらないのが多い。少しレベルが低いんじゃないかと思う。

DTP化された時と近いのかもしれない。DTPではルーティンワークがあって、その実感があると思うが、ウェブではデザインしていると思って実際には作業員的にルーティンワークしかできない人が多い。

もっとデザインの基礎的な部分を学んでほしい。以前はデザインを横からもってくるのが大変だったので、それをもってくるところで勉強もできたのだが、今は簡単に人のデザインのコピーができるのでやばい。

怒る人がいないんでしょうね。自分は、1ピクセルずれているだけで怒られる、息を吸うだけで怒られる、という中で育ったのだが、今のデザイナーは下積みをしてないし、する必要もないと思っているようだ。ゆとり?

オペレーターが増えてしまっているのかな。ここを変えてください、わかりました、という感じで仕事をしている。私は「どうしてそうするのか」を説明してくださいといつも怒っています。

私はゆとり世代です。反論はなくて、下積み的なことは新卒でやらされた。
誰よりも早く会社に行って入口の前をほうきではいてきれいにするということをやっていたが、周辺の人に顔見せができ、地域貢献していることも見せられるので、よいことだったと思う。

最近は情報もやツールも豊富で、とりあえずぱっとデザインを出せるようになった。とりあえず出してA/Bテストしようよという価値観になったのではないか。
マテリアルデザインなどのガイドラインもあるし、ルール通り作るしかないことが多い。ものづくりのお膳立てがもうある時代に、どのように経験者が若手に教えればよいのか。

コミュニケーションツールは増えているのに、本当のコミュニケーションは少なくなったと感じる。老害だが。

相手の顔が見えている時と見えてない時では違う。ほとんど海外とリモートで仕事をしているが、F2Fが減っていることで、コミュニケーションが難しいとよく感じる。

徒弟制的なコミュニケーションは減っていて、メッシュ型のコミュニケーションが増えている。コミュニケーション量は昔にくらべて増えていると思う。

もともとデザイナーは徒弟制でやってきて、それが理想型だった。ただ仕事が忙しすぎるなどもあってそれが機能していない。若い世代にも問題はあるだろうが教える側にも問題がある。自分がしてもらっていたことを若い世代にしているかというとそうでもないのではないか。

トピック: みなさんがやっているような工夫、スキルアップなどのことを知りたい、役に立つようなもの

あえて便利じゃないことをする、あえてめんどくさいことをする。そしてひとつの行動をすごく細かい単位で見つめ直す。マイクロインタラクションのように。そうすることで、デザインの細部に気づけるようになる。

好きな仕事も嫌な仕事もあるが、なぜ自分がそれをやっているかというのをリバースエンジニアリングしまくる。そうすると問題の根本がわかったり、本来やるべきことに気づいたりできる。

いかに手を抜くかということをやっている。いかに仕事をしないか。それによって自分の時間を作り、自分の好きなことをやるように努めている。そのために、ものごとの判断を常に3分以内にすることにしている。

バッティングセンターに行きます。インプットしたあと頭をからっぽにしてバランスをとるといい。


これらはディスカッションのごく一部ですが、会場では様々な立場からのざっくばらんな発言が飛び交い、お酒も入って大変盛り上がる時間となりました。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

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