『デザイニング・インターフェース 第2版』を監訳しました

上野 学

2012年1月13日

オライリージャパンから先月出版された『デザイニング・インターフェース 第2版』の監訳を、第1版(2007年)の時と同様に、担当いたしました。

第1版を読んだ方はすでにご存じかと思いますが、本書は、デスクトップアプリケーション、ウェブアプリケーション、モバイルアプリケーションなどから、ユーザーインターフェースを構成する様々なベストプラクティスを集め、それらを「デザインパターン」として体系化したものです。ユーザーインターフェース/インタラクションのデザインに関わるすべての人に役立つ一冊となっています。

デザインの共有と学習

第2版では、昨今の潮流を反映して、新たに「ソーシャルメディア」「モバイルデバイス向けのデザイン」という章が追加されており、これらのUIに関する豊富な事例が紹介されています。

また、第1版が出版された後にUIデザインの分野で起きたもうひとつの潮流として特筆すべきは、「UIデザインパターン」というものの存在が広く認知されるようになったことだと思います。以下、「監訳社あとがき」より引用します。

“この数年の間に、ユーザインターフェースに関連する様々なデザインパターンを扱った書籍やウェブサイトがいくつも作られています。そして多くのデザイナーやプログラマーがそれを活用して、ユーザビリティを向上させたり、開発効率を高めたり、新たなインスピレーションを得たりするようになりました。

この背景には、高品質なユーザインターフェースへの需要の高まりがあります。デザイン性や操作性の良い製品が市場でヒットし、手のひらの中でリッチなエンターテインメントを楽しむことができるようになり、そしてクラウドを経由して時間や空間を超えた、あるいはリアルタイム性の高いコミュニケーションが活発に行われるようになるにしたがい、ユーザインターフェースというものがサービスやシステムの根本的な価値に繋がっているのだということを多くの人々が認識するようになったのです。そして、優れたユーザインターフェースをデザインするための分かりやすい方法論と、それを共有/学習するための言語がますます求められるようになったのです。”

本書の価値は、このような時代のニーズに応えるソリューションとして、内容の網羅性、構成の合理性、解説の論理性といった点で、同種のテーマを扱う他文献よりワンランク上の存在となっているように感じます。

そもそも、デザインを「パターン」という視点で分析することは、実制作をする者にとっても、それを評価管理する者にとっても、非常に有用なことです。なぜならパターンには、「すぐに真似することができる具体性」と、「複数のシステムで再利用できる汎用性」の両者が含まれているからです。デザイン理論だけを説かれてもすぐに実践に活かせませんし、ステンシルやソースコードだけを提供されても本質的なコンセプトは理解できません。デザインをパターンとして扱うことで、それを効率的に共有/学習することができるのです。

UIの体系化

第2版では、前述のとおり新しく多くのパターンが追加されていますが、その前に、全体の構成についての再整理がなされており、既存パターンの章移動、名称変更、統廃合など、網羅的なリファレンスとしての価値を高めるために積極的な変更が加えられています。

私は普段いろいろな案件で「UIガイドライン」や「UI仕様書」といった類いのドキュメントを作成しますが、UIを構成する要素を MECE(重複なく・漏れなく)に分解し、なおかつ読者にとって分かりやすい分類階層化するのは本当に難しいものです。

例えば、「テキストボックスのプロンプト」というUI表現を紹介したい場合、ドキュメント構成上、「フォームコントロール」や「ラベル」といったUI要素の種類のひとつとして表すのか、「マウスアクション」や「メッセージ表示」といったインタラクションの種類のひとつとして表すのか、それとも「目に見えるようにする」や「ヘルプ情報を提供する」といったデザイン原則のひとつとして表すのか、判断に迷います。ドキュメントの構成が複雑すぎても、また単純すぎても、リファレンスとしての利便性が悪くなってしまうのです。

そういった意味で本書は、おおまかに「概念的なテーマ」から徐々に「表層的なテーマ」へ言及していく構成ではあるものの、画面遷移、レイアウト、コントロールの振る舞い、コンテンツ表現、といった互いに重なり合う要素をうまくまとめ上げ、読者の理解と検索を助けています。

この卓越した構成力・説明力こそが、UIについてのコンサルティングを行う私にとって、最も感化されるところなのです。

以上のように、本書は、UIデザインに関わる全ての人にとって大変役立つものと考えます。すでに第1版をお持ちの方も、また「UIデザインパターン」というものをほとんど聞いたことがないという方も、是非読んでいただきたいと思います。