ユーザビリティが良くなれば顧客ロイヤルティは向上するか?

ジェフ サウロ

2015年9月4日

ネット・プロモーター・スコア(NPS)とシステム・ユーザビリテイ・スケール(SUS)

原文: Does Better Usability Increase Customer Loyalty? [2010/1/7](翻訳: ソシオメディア株式会社)

あなたは自分が使っている携帯電話を友達に薦めますか? このあいだ借りた車のレンタカー会社はどうでしょうか? 顧客ロイヤルティは製品やサービスの長期的な存続における重要な要素です。顧客満足度と顧客ロイヤルティの測定には様々な方法があり、その多くにはアメリカン・カスタマー・サティスファクション・インデックス(米国顧客満足度指数)のようなアンケートが含まれます。中でも最も利用されているのがいわゆるネット・プロモーター・スコア(NPS)と呼ばれるものです。

NPSは「あなたはこの製品を友人や同僚に薦めますか?」というたったひとつの質問を基にしています。回答の選択肢は0から10までの11段階で、数が大きければ大きいほど薦める可能性が高いということになります。9、10を選ぶ人は推奨者(プロモーター)、6以下の人は批判者、7、8の人は薦めもしなければ、批判もしない受動者となります。ネット・プロモーターの「ネット(総数)」はその回答の採点方法から来ています。推奨者(プロモーター)の数から批判者の数を差し引いたものがネット・プロモーター・スコアとなるわけです。こういった極端な回答をする顧客のほうが、口コミで製品やサービスをほめたり、けなしたりする可能性が高いという考え方です。この、たったひとつの質問は、企業の長期的成長を予測する良い基準であると言われています。

ユーザビリティの受け止められ方は、顧客ロイヤルティにおける変化のおよそ3分の1を説明する

NPSも論争とは無縁ではありません。中にはその予測能力と信頼性を疑問視する向きもあります。一般的には、ロイヤルティやユーザビリティ、満足度といった構成概念を測りたければ、ひとつの質問に頼るのではなく、複数の質問があるほうがより信頼性が上がるでしょう。しかしNPSは、その単純さ、また直観性ゆえに企業に人気があります。また、ひとつの質問であっても意外にも多くの情報をもたらしてくれる [PDF] ものです。

ロイヤルティを向上させるものは何か?

誰もがより高い顧客ロイヤルティを望んでいます。ですからロイヤルティを示す目盛りを上に振れさせるにはどの「レバー」を引けばいいのかを知っておくことはとても重要です。ロイヤルティを向上させる変化を起こせるなら、収益も増加するはずです。では、ユーザビリティを向上させれば顧客ロイヤルティも上がるのでしょうか?

その答えを見つけるために、ユーザビリティの受け止められ方を測定するものとして人気のシステム・ユーザビリティ・スケール(SUS) [PDF] に注目し、NPSに対する回帰分析を行ってみました。レンタカー会社や財務アプリケーション、そしてアマゾン・ドット・コムなどのウェブサイトを含む 12ほどの商品/サービスについて全体で146人のユーザーから得た回答を検証しました。データはラボで行われたユーザビリティ・テストとともに最近購入した製品のアンケート調査(同じユーザーがSUSとNPSの両方に回答)の結果が元になっています。

NPSとSUSには0.61という強力なプラスの相関関係があり、それはつまり、SUSのスコアはNPSの変動性のうちおよそ36%を説明できるということを意味しています。回帰分析の式は:

NPS=0.52+0.09(SUS)

となります。

ユーザビリティの受け止められ方が良くなれば顧客ロイヤルティも向上する

したがって、SUSのスコアが70であれば、NPSでのスコアはおよそ7となり、少なくとも88のSUS スコアが、推奨者(9+)になるためには必要となります。

推奨者(プロモーター)と批判者のSUSスコア

データからもう一つ導き出せるのは、推奨者と批判者のSUSスコアです。推奨者はSUSスコアで平均82、批判者は平均67です(p<0.01)。目指すべきSUSスコアを求めるとすると、80より上であれば確実に推奨者の範囲に入ると私は思います。


図1:NPSの批判者と推奨者をSUSスコアで表した場合の平均及び95%信頼区間

「推奨者」とするには80以上のSUSスコアが望ましい

NPSとユーザビリティアンケートが強い相関関係にあることは何も驚くことではありません。と言うのは、質問が大変に似通っているのです。例えば、SUSの質問のひとつは「ほとんどの人がこのシステムの使い方を簡単に学べると思う」かどうかを問うものです。

言うまでもなく、ユーザビリティのアンケートがユーザビリティのすべてではありません。実際にはおそらくユーザビリティの3分の1くらいに過ぎないでしょう(ISO9241 pt11の定義もあります)。ユーザビリティの測定にはタスクタイム(作業時間)や完了レートといった、タスク・ベース・パフォーマンスの評価指標もあります。こういった指標はSUSやNPSなどのテスト後に行うユーザビリティアンケートとはわずかな相関関係 [PDF] しかありません(Sauro &Lewis 2009)。

アンケートがユーザビリティの全体像の一部しか示していないにしても、やはり重要なものなのです。事実、アプリケーションのユーザビリティにおける一人のユーザーの認識のほうがタスク・パフォーマンス(いわゆる「入り口的」ユーザビリティ測定)よりも重要に感じることでしょう。今回のデータは、ユーザビリティの向上が顧客ロイヤルティに実質的なインパクトをもたらすことを示唆しています。もし人々があなたの製品が使えるものだと思えば、彼らがそれを使う可能性が高まり、人に薦める可能性も高まり、そしてあなたの製品が売れる可能性も高まるのです。


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来たる2017年4月26日、UXを推進する組織におけるリーダーシップをテーマにしたイベント「ソシオメディア UX戦略フォーラム 2017 Spring」を開催いたします。世界を代表するエクスペリエンスリーダーである IBM Design ゼネラル・マネジャーのフィル・ギルバート氏(Phil Gilbert)をキーノートに迎え、また国内からは日本を代表する企業でエクスペリエンス分野を牽引する3名を迎えながら、企業戦略の中核にUXを据えるリーダー像の現在を探っていきます。各社での具体的な取り組みや考え方、そして各リーダー同士の議論や会場内での交流を通じて、企業におけるUX戦略やUXリーダーシップのあり方について学ぶことのできる時間です。

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