「国立国会図書館サーチ(開発版)」のUIデザインコンセプト

上野 学
2011年10月28日

ソシオメディアは、国立国会図書館様が運営する「国立国会図書館サーチ(開発版)」について、2010年1月から2011年3月まで、国会図書館ご担当の皆様・株式会社NTTデータ様とともにUIデザインをさせていただきました。
(事例:「国立国会図書館サーチ(開発版)」のUIデザイン [国立国会図書館様]

国立国会図書館は多くの文献検索サービスを運営しています。その中でも、この新しい国立国会図書館サーチは特別な位置づけにあると言えます。

国立国会図書館サーチは、国立国会図書館が所蔵する全ての図書、デジタルアーカイブ、レファレンス情報(探し方/調べ方の事例など)、都道府県立図書館、政令指定都市の市立図書館の蔵書を検索(非同期での横断検索)できるほか、書誌属性情報にもとづいた多段階での絞り込み、連想キーワード検索、翻訳表示、書誌同定、外部サービス(各種検索エンジン、ソーシャルサービス、所蔵機関サイト、オンライン書店、辞書)への連携などが可能であり、国内にある豊富な「知」を活用するアクセスポイントとなるサービスです。

この意義深いシステムの初期バージョンのUIをデザインするにあたり、ソシオメディアは次の2つをコンセプトとして提案しました。

  • シンプル
  • モードレス

これらについてもう少し詳しく説明してみましょう。

シンプル

国立国会図書館サーチは、上述したとおり非常に多くの機能を持つシステムですが、ターゲットとしては、文献検索の専門スキルを持たない一般の人々も想定されており、誰でも十分に利用できることが前提となっています。そのため、「複雑なものをシンプルに見せる」ことが重要であると考えました。

  • 一般ユーザーにとっての利便性を重視し、一度に見せる情報量を減らす。また、学術的な用語はできるだけ用いずに分かりやすい言葉を使う。
  • データベース内のフィールドをそのまま羅列するような表現ではなく、一般の検索サイトやEC サイトにあるような、一般ユーザーにとって意味のある分類や提示順序で検索条件を指定できるようにする。
  • まずは機能を限定した画面を提示し、高度な機能は後から別途呼び出すようにする。
  • 抽象概念を強要せず、サムネール画像やアイコンなどを用いて検索対象物を具象的に表現する。

モードレス

世の中にある高機能な文献検索サービスでは、一般的に、複数の検索モードがあり、それらの役割や特徴を理解していないとどれを使ってよいのか判断できません。また、検索条件を入力する画面と検索結果が表示される画面が分離しているものが多く、少しずつ条件を変えながら繰り返し検索を行ったり、絞り込み条件を加えたり外したりして、試行錯誤しながら情報探索を進めるといった作業がしにくくなっています。そのため、「モードを無くして自由な順序で操作できるようにする」ことが重要と考えました。

  • 複数の検索モードを設けて入り口を分けるのではなく、ひとつの検索画面ですべての機能を使えるようにする。
  • はじめから複雑な条件を入力させるのではなく、まずは最小限の条件で結果を出せるようする。
  • 詳細な検索をする場合でも、必要な条件だけを段階的に追加できるようにする。
  • 情報探索の試行錯誤がしやすいように、検索結果を見ながらその場で条件の追加変更をして再検索できるようにする。そのために、検索条件入力画面と検索結果表示画面を分けずに、ホームからすぐに全検索機能を使えるようにし、検索結果画面でも全く同じ機能を同じ場所に提示することとする。つまり、「簡易検索」「詳細検索」「検索結果表示」はすべて同一画面内で繰り返し行えるようにする。

このようなコンセプトにしたがってデザインした結果、高機能でありながらも、すっきりとした見た目と、少ないレイアウトパターンで、システム全体を構成することができました。初期のUIからさまざまな機能追加を経て、この2つのコンセプトとのトレードオフを検討しながらプロジェクトは進んで行きました。

ソシオメディアは今後も「国立国会図書館サーチ」がより使いやすいシステムになるよう、応援していきます。

みなさんも是非利用してみてください。