タブレットに見るソーシャルなデバイスの可能性

榊原 春己
2010年3月8日

iPad の写真やジョブスのプレゼンのビデオをみたり、1月の CES での Plastic Logics 社の QUE のデモビデオをみていると、ハンディでありながらノートパソコンやネットブックとは違う物理的な特徴に気が付きます。ノートパソコンにはキーボードとディスプレイがあるため、使っているときは横からみると「く」の字のようになりますが、iPad や QUE は文字入力や操作はタッチで行うためキーボードやマウスがなく、単なる「板」です。この板のような形状からこれらをタブレット・コンピュータ(あるいは単にタブレット、またはスレートという人もいる)といいます。

私は単なる「板」という形と、iPhone などのスマートフォンよりも大きい「大きさ」に注目してみたいと思います。今までのデスクトップパソコン、ノートパソコンやネットブック、あるいはケータイや iPhone などのスマートフォンとも異なっていているこの形と大きさに、今までになかったデバイスのカテゴリーを作りだす示唆があると感じているのです。もちろん、今や、ネットから孤立したデバイスが新しい領域を作るわけはありませんから、それは新しいウェブサービス領域を作りだす可能性もあります。

さて、タブレットの最大の特徴は、表示されるものが周りの人から見えやすくなっている、という点だと思います。単なる板ですからディスプレイを隠す物がありません。
デスクトップパソコンのディスプレイは立てた状態で使いますからディスプレイの後ろからは何が表示されているか見えません。ノートパソコンでも同様です。ケータイや iPhone は手の中に収まっていますし、そもそも小さいですから周りからは見えにくい。手の中に収まっているので、もし見られていそうなら見せたくないように持っている手を少し動かす、ということが自然にできます。電車の中でよく見られる行動です。

タブレットを机の上に水平におけば、目隠しになるような構造をもっていませんから、左右はもちろん、360度どこからも見ることができます。ユーザーの正面にいる人には、逆さまなのですが、おおよそどんな情報かはわかるでしょう。
机の上に置いて何かをみている、ということは、すなわち、周りの人に対して「関心があったら見てもいいよ」と無言ながら言っていると考えられます。

このような「見てもいいよ」オーラを発することができるデバイスは今までになかったのではないでしょうか。
例えば、オフィスで自分の椅子の後ろに立って、じっとディスプレイを見ている人がいたら「なんか私の仕事に不満があるわけ?」と感じてしまいそうです。ですからこういった行為を了承を得ずに実行する人はいません。モノの形や構造は人の行動を左右しているのです。

今までのIT機器はパーソナルへの方向を突き進んできました。その名の通りのパーソナルコンピュータ、ケータイ、iPhone などのスマートフォンなどなど。ソーシャルを実現するのはウェブ上のサービスとしてであり、いま隆盛を極めています。

そろそろ、ソーシャルな要素は、ウェブだけでなく、我々が物理的に手にし操作するデバイスにも組み込まれてもいいのではないでしょうか。
ソーシャルなデバイスは、ソーシャルなサービスをさらに発展させるインパクトがあるはずです。現時点のタブレットは「すぐそこの未来」を感じさせてくれます。

先に挙げた iPad も QUE も、どうやら従来のパーソナルなもので、ソーシャルなタブレットは目指していないようですが、これからいろんなタブレットが世に出てくることが予測されます。おそらく、OEM 供給などによって、いろんなブランドのタブレットがでてくる展開になると思います(期待します)。
多数のタブレットが出てくる中で、人を引き付けるソーシャルさを醸し出す鍵となるのは、やはりUIデザインでありUXデザインです。
「すぐそこの未来」の UI & UX デザインにむけて、ソシオメディアは準備を進めています。ご関心ある方、ぜひコンタクトください。