「ソシオメディア・フォーラム 2002年11月 ユーザーエクスペリエンス向上のための企業ウェブ情報整理術」

去る2002年11月7日、東京都新宿区の野村カンファレンスプラザにおいて、ソシオメディア・フォーラム2002年11月「ユーザーエクスペリエンス向上のための企業ウェブ情報整理術」が開催されました。

フォーラムの概要

フォーラム風景:講演をするレティグ氏今回のテーマは「ウェブサイトの利用体験(ユーザーエクスペリエンス)を決定づける情報構造の設計」。「増え続けるサイト上の情報をいかにユーザーに分かりやすいように分類整理していくか」という課題の解決に向けて、「情報構造の設計」分野の第一線で活躍するゲストをお招きして開催されました。

フォーラム第一部は米国より迎えたインタラクション・デザイナーであるマーク・レティグ氏による「米国企業が実践しているアプローチ手法」と題した講演、第二部は株式会社リクルートの岩佐浩徳氏による「ウェブサイト情報整理術」と題した講演が行われました。

マーク・レティグ氏プロフィール

インタラクション・デザイナー。20年以上にわたり、アンダーセンコンサルティングを皮切りに数々の組織において、ユーザー中心のデザインやプロセスに関わるソリューションに携わる。またカーネギーメロン大学デザイン大学院の客員教授として、インタラクションデザインのためのクラスを担当しているほか、ウェブに関する各種カンファレンスや、AIGA(the American Institute for the Graphic Arts)のエクスペリエンスデザイン SIG などで委員を務めている。

雑誌「web creators」(エム・ディ・エヌコーポレーション刊)において「ウェブサイトにおける伝えるための技術を考察する」をテーマに、弊社代表 篠原稔和と誌上対談を連載中。

アウトライン

  1. フォーラム風景:熱心に聞き入る来場者マーク・レティグ氏講演
    「米国企業が実践しているアプローチ手法~interaction design for people, for business」

    • ストラテジー(why design matters)
    • 賢明なアプローチ(start with people)
    • 実践事例(projects that worked)
  2. 岩佐浩徳氏(株式会社リクルート)講演
    「ウェブサイト情報整理術」

    • 事例紹介
    • ユーザー中心型の開発プロセス
    • ユーザー経験に沿った、設計時の注力点

今回のポイントとサマリー

  • マーク・レティグ氏講演「米国企業が実践しているアプローチ手法」
    • デザインを形作る要素とプロセス
      フォーラム風景:ポストイットを利用して情報を整理する様子を紹介するレティグ氏 「人(people)」「ビジネス(business)」「テクノロジー(technology)」3つの要素に分けて検討することが重要である。
      特に、「人が何を必要としているか」を十分に調査し、理解することからプロジェクトを始めなければならない。そのうえで、用途と実用性を配慮したデザインモデルを作成して再検討する必要がある。つまりこれは、検討~理解~プロトタイピング(モデリング)というプロセスを何度も繰り返しながら、最適なデザインを探し求めることを意味している。
    • 検討手法および体制
      検討~理解フェーズに欠かせない情報の整理を行う場面では、「得られた情報を全て書き留めて、壁に貼りだしてカテゴライズする」という手法を用いる。また、その作業にはプロジェクトに関わる全ての人々が参加するように促す。同じプロセスを共有することで、結果としてプロジェクトへの理解が深まり、その後の意志決定やコミュニケーションがスムーズになる効果もある。
    • 民族誌学的アプローチ(ethnographic approach)
      人の行動を分析するためのひとつの専門分野として、「民族誌学的アプローチ」というものがある。このアプローチは本来、特定の民族や文化を対象にして、種々雑多な人々の活動パターンを理解し、いくつかのメソッドを見いだすことを目的としているが、ウェブサイトのデザイン構築の段階でも適用することができる。
    • 事例紹介
      インタラクション・デザインのプロセスに参加した事例として、数社のケースを紹介。たとえ限られた納期(時間的なプレッシャー)の中でも、デザインのプロセスを繰り返し実践し、膨大で複雑な情報またはタスクを明瞭で正確な状態に整理することから始めなければならない。
    • 質疑応答(抜粋)
      「事例として紹介されたケースでは、結果としてどのような『目に見える効果』があがったのか」
      システムのインタフェースデザインが変わったことにより、当初、担当者はかなり当惑していた。さらに、これまで以上の知識が必要にもなってしまった。しかし、最終的には、従来のつまらない雑多な作業の繰り返しではなく、直接的な分析作業に携わることになったため、システムのオペレーションを担当するスタッフは自信をもって取り組むことができるようになった。

  • リクルート社 岩佐浩徳氏講演「ウェブサイト情報整理術」
    • 事例紹介
      フォーラム風景:数々のサイト構築事例を紹介する岩佐氏リクルート社では、同社の情報誌をベースにしたコンテンツを網羅的に提供している。そのなかのいくつものサイトにおいて、ユーザー・インタフェースのデザインを中心に担当した。各プロジェクトにおいて徹底して意識したポイントは「主要導線をシンプルにする」ということ。リニューアル後のユーザー導入効果が2倍になったサイトもある。
    • デザインプロセス
      デザインの検討は、以下のような「ユーザー中心型のデザイン開発プロセス」で進められた。

      1. プロジェクトの目的を明確にする
      2. 現状分析
      3. コンセプト(情報構造)の検討
      4. コンセプト(デザイン)の検討
      5. プロトタイピング
      6. 画面設計

      現状分析フェーズでは1000項目以上のポイントを含んだ「サイト評価チェックシート」や、詳細に検討された想定ユーザープロフィールを複数用意した。また、デザインコンセプトの検討フェーズで明文化された「ブランドパーソナリティ」は、プロジェクト自体が混乱し始めた際に、基本に戻って意識統一を行うためにも用いた。

謝辞

当フォーラムの開催にあたっては、多くの企業様より協賛及び後援をいただき、成功に至ることができました。約110名のご来場者の皆様および後援・協賛いただいた企業の皆様には改めて深く御礼申し上げます。

  • 後援:株式会社エムディエヌコーポレーション、株式会社アサツー ディ・ケイ、株式会社デジタルスケープ、株式会社ディーエス・インタラクティブ
  • 協賛:株式会社アスキー、日経デザイン、C&R社プロフェッショナルエデュケーションセンター(PEC)