VUCA に対峙するデザインアプローチのポイント

篠原 稔和
2020年9月28日

VUCA laboというグループを主宰する友人からイベントのお誘いをいただきました。
そこで、「VUCA」といったキーワードに関わる事象への取組み方について、考えてみたいと思います。

「VUCA」とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの言葉を組み合わせたもので、社会やビジネスにおいて先を見通せない状態になっていることを指しています。そもそも、この言葉の出自は軍事用語にあって、以前のような国と国との戦いとは異なる指導層の明らかではないテロ組織のような相手と対峙するようになったことから、そこでは不確実で不透明な状況に立ち向かうことが求められていることを意図しているのです。この状態は、デザイン思考のアプローチが対峙する「厄介な問題(Wicked Problem)」にも通じるところがあります。

そこで、このようなVUCAといった事態に対処するための取組み方として、提唱されている2つのアプローチをみてみましょう。

その1つめは、「OODA Loop」といって、意志決定や行動に関わる理論として、昨今ではビジネス領域でも適用されているものです。「OODA Loop」は、「観察(Observe)」、「状況への判断・仮説の構築(Orient)」、「意思決定(Decide)」、「行動(Act)」、「Loop(Implicit Guidance & Control, Feedforward / Feedback Loop)」の略称になっています。ここでは、自らが状況に適応して迅速に判断をくだし、次のアクションを起こしていくことが求められているのです。


OODA loop *1

2つめのアプローチは「AAR Cycle」といって、OECDの「Learning Compass 2030(ラーニング・ コンパス 2030、教育の羅針盤)」*2で推奨されている、未来に対応する学習サイクルです。「AAR Cycle」は、「予測(Anticipation)」、「実行(Action)」、「振り返り(Reflection)」、「対話や協同による繰り返し(Cycle)」の略称になっています。ここでは、自身で予測して計画をたて、実践した上でその実践を振り返って、その経験から次の予測や目標をたてる、といった学習サイクルを個人で行うだけでなく、他者と協働しながら行うことを重要視しているのです。


AAR Cycle *2

「OODA Loop」にしても「AAR Cycle」にしても、重要なポイントは、それぞれのステップとしてのプロセスを踏むことにあるのではなく、先の見通せない状況に際して「問題・課題の発見」と「問題・課題の解決」と「その繰り返し」による取組み(「OODA Loop」であれば「OO」と「DA」と「Loop」、「AAR Cycle」であれば「(2つめの)A」と「R(1つめの)A」と「Cycle」)を続けていくことの「マインドセット(心構え・捉え方)」にあるのではないでしょうか?

2020年9月30日開催
VUCA labo #006「不確実な時代のデザインの役割」(Connpass)

*1. OODA Loop
https://en.wikipedia.org/wiki/OODA_loop
https://ja.wikipedia.org/wiki/OODA%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97

*2. AAR Cycle
https://www.oecd.org/education/2030-project/teaching-and-learning/learning/aar-cycle/
http://www.oecd.org/education/2030-project/teaching-and-learning/learning/learning-compass-2030/OECD_LEARNING_COMPASS_2030_Concept_note_Japanese.pdf